夏は怖い 夏が憎い 夏が嫌い
俺を死地へ向かわせる電車が空調の冷風で皮膚を切り裂く
屋根だけで陽を遮る駅舎はこれから起こるなんの意味もない時間を予期させる
「病める夏」「怖い夏」「会いたくないよ」歌詞が背後に迫っている 気配にぞわりとする
視聴覚室の古びた木材が湿気た空気を吸って気持ち悪い息を吐いてる
視聴覚室のボロボロの遮光カーテンが窓の外と部屋の外を行き交いこちらを嘲笑ってる
早く落ちろ、と怒鳴りたてているギターの音を廊下で聞いている
掌と左膝に食い込む窓の格子は冷たかったのにすぐ体温で温くなる
行ったことはないがあの人が住んでいる町の田園風景は確かに俺の事を嫌っている
夏服のコントラストは色白の先輩によく似合う
夏に責められると自分は死ななければならないのだと確信する
自転車が駆け抜けている
夏は怖い 夏が憎い 夏が嫌い