断片的

こういうことになる

2日分の日記

5/21

掠れた声で並べた建前の物陰に隠れてじっとしている。何曜日でもない朝が始まる。目の前を流れていく日常の、不自然な配色が目に痛い。偶像崇拝を繰り返しながら途切れる意識の合間、偶像が虚像になっていた。例えそうだとしても、信仰を掲げることをやめたくない。「本当の愛は宗教心とそう違ったものでないと言うことを固く信じているのです」とのことですが、あなたはどうですか?

どんな形であろうとあなたには幸せになって欲しい、かつて私にそう声をかけてくれた彼女は姿を眩ませた。一緒に遊びに行こうという約束を私は覚えている。実現するだろうと楽観視していた予定は有耶無耶になった。手から離れ飛んで行った風船が、どんどん小さくなっていく様子を見ているようだった。私の知らないところで彼女がのびのびと生きていてくれてるならそれで構わない。ただ、少し寂しい。打ちひしがれた時に聴いた彼女の聡明な声を私は忘れられないだろう。それだけだ、それだけでいい。

言葉を惜しみたくはない。わたしを構成するひとつひとつが言葉に置き換わって、自我から切り離された物語にでもなればいい。そこに魂はなく、事実と心象が滾々と述べられているだけの回顧録に。そしてわたしの代わりになればいい。それを切り刻んで燃した灰を降らせて、悪意も好意もない虚像に私の思想の魔の手が伸びていけばいい。
濁ったぬるい水の中はさながら胎内のようだ。ここにいるせいか、身動きがとれない。爪で弾いた甲高く歪な音はもう聴こえない。まだ伝えていないことは正体を現さない。深い霧に隠されていく彼我の関係。変心の快報だなんてくだらない夢想を吸いこんで嘔吐く。私はいまだ身の程を知らない。

 

 

‪5/28

おれはいつしか祈りを忘れるかもしれない。変な味のする固形物を噛みちぎる。吐き気を堪えながら、生きるためなら仕方ないと言い聞かせる余裕もないまま、嫌々ながら作業のように動作をしている。‬
おれは祈りを蔑ろにしてしまうかもしれない。頭の中に浮かび上がることができるのはぽっかりと穴の開いた自分の顔、顔だったもの。むしろ頭部と呼ぶにふさわしい。
あの人をバラバラにしろ、とボーカルが絶唱している。この世界において自分で選んだBGMが生活に与える影響はいかがなものか。帰路の中、強い眠気に似合っていたのは虚しい曲だった。己の諦観を肯定できるようなそういった時間は、生活の中でもかなり少ない。こちらの祈りも虚しく、お構い無しにやってくる喜怒哀楽にうんざりする。嘘をつきたくない。ドアのガラス窓に反射した世界が憎い。手に入れられなかったものはそこにあったはずということを思い出すと具合が悪くなる。おれの祈りは最初からどこにも届いていなかったのかもしれない。このままスイッチを切るように眠りたい。