断片的

こういうことになる

怒鳴り声と架空生物の横顔

がらんと空いている快速電車の中は冷房の人工的なそよ風が心地よく吹いている。辺りを見回しても同じ車両に乗り合わせていた人の数は両手で数えるに足りてしまうほどだった。このままずっとここにいたい、そう反射的に考えた頃には、私を運ぶ快適な速い箱が速度を落として停止する。

立ち上がるための力はもうなくて、時々そのことが酷く神経を逆なでする。へたりこんで俯きながら曖昧な笑みを浮かべる。ふと周りを見渡すと、見知った人間の顔に似た数個の肉塊が現れた(それはわたしの靴1足とちょうど同じくらいのサイズだった)。肉塊は頭部と思しき箇所をこぞってこちらへぐいと寄せてきた。さらにより深い皺が刻まれるように肉を歪めている。

そうあるべくかのように、私の頭に血がのぼる。非武装地帯で響き渡る怒鳴り声が脳を圧迫して目眩がする。 破裂することなく、あちらこちらから伸びている罅からはとめどなく血が流れている。

滴る怒りを呆然として見つめる。すると、怒鳴り声をあげる人間が増えたばかりではなく、どこからともなく地を這うような笑い声とすすり泣きさえもが聴こえるようになった。てめえこの野郎、そう喉まで出かかったはいいものの声帯が全く震えなくて、あまりの嫌悪感に嘔吐くことしか出来なかった。

早くここから出なければ、と考えながら後ずさるようにして体を起こす。もう動けないとうなだれている彼女らを渋々引っ張りあげて立ち上がらせる。肉塊は未だにこちらを見据えて嘲笑っていて、私は舌打ちをする。それを引き金にして、力を振り絞って箱から飛び降りた。二人分の体重を自由落下で振り切って、おれたちは