断片的

こういうことになる

20200410日記

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・炒飯の読了に失敗

 

 

アルプラゾラムを飲む時間をいつもより早くしたら、寝る準備から床に就くまでの間少し気分が良くなった。

・しかし、気が抜けた口からこぼれた自分の言葉に(実際は何気なくしようとしていたツイートの文面のことなので、私は嘘をついています。嘘しかついていない人生が何回寝ても何回起きても終わりません。本当に助けてくれませんか?)自己嫌悪を誘発されて一瞬で気分が悪くなる。つかの間の均衡が崩れ、いとも容易く不安へと目盛りが傾いていく。

・気分が良かったのは好きなバラエティ番組をリアルタイムで視聴したからそのおかげだったのかもしれない。

 

・いつからか、この部屋に来てからか?それともずっと前からなのか、分からない、兎にも角にも全て他人事のようだ。新しい生活、新しい街、自分だけの空間、自分だけの生活、全て他人事のように過ぎていく。偽物だということが誰にもバレないように振舞って他人のフリをして日々をやり過ごしている感覚がずっと続いている。何と何とが乖離しているのかはわからない。

・自分が自分として好きな人たちと接している時は苦しい。自分が[本名を意味する文字列]として職場の人や学校の人と社会的な交流をすることも苦しい。自分が自分であることを忘れられる時間というのは少ない。完璧な演技を長い時間できる人、俳優のような才能があれば良かったかもしれない。

 

・ここ1ヶ月ずっと、好きな人と生まれて初めての会話をした先日の出来事を、繰り返し繰り返しなぞって眺めている。その日その瞬間、私の好きな人にとって私の存在は「ただの通行人A」と同義でしか無かった。モブキャラクターだった。他でもない私自身がそうなるように努めたからだった。

・完全なるモブキャラクターとして好きな人と会話をしたことは何よりも幸せな出来事だったと思う。今までの人生において、今よりもずっと楽しい時期やその時しか出来なかった出来事はいくらでもあった。けれども、本当の幸いはあそこにあった。あの日はちょうど、あの時だけ湿った雪が降っていて、私はあれ以上にいい雪の日はもう、生涯訪れないだろうと、そう思っている。

 

・戸籍上の名前を変更できたら、顔面を全くの別人に、声質をまったく違うものにできたら、とふと思うことが何度もある。毎回理性が勝つにもかかわらず、懲りずに何度も考える。いずれも不満はない。ただ、違和感が次第に大きくなっていく。逃げ出したくなる。死ぬまでずっと自分ではない他の誰かの演技を続けて、好きな人の隣にいれたらと夢見る。不可能だからこそ、願ってやまない夢だ。時間とともに忘れていく記憶が何もかも戻らなくなる日とか、ふと目を覚ましたらどこかも分からない誰もいない場所で目が覚めて、起き上がり方も分からないままそのままもう一度眠りについてしまうみたいなこととか、私のやりたいことや欲しいもの、将来の夢というのがこういうことばかりなので、人との話が噛み合わない。

 

・日記の書き方が分からない。自分が紡ぐ言葉を信じられない。いや、言葉を捻出することが、出来ないのではなくて、怖い。日記を書いているこの最中に思い出す。自分の考えを言葉にすると、自分はもうどうしようもないのだということを重ねて深く刻みつけられる。もう日記すら書けない、困っていることがたくさんある。自分にまつわる出来事に向き合おうとすると、恐ろしいものにたくさん直面する。

・それでも、部屋のエアコンの温度は快適で、壁が白くて、カーテンがかわいい水色で、ベッドの寝心地は思ってたより良くて、台所の鍋にはさっき作った野菜スープが残っている。かかってきた電話に出れるし、病院の診察をキャンセルする電話だってかけられる。落として割った食器の破片も片付いている。ごく細かな破片を口の中でジャリジャリとすり潰した時の感覚も思い出せる。すべて自分が選んだもので、すべて自分が引き起こしたことだという記憶はある。それなのにやっぱりどうしてここに自分がいるのかは分からない。

 

・ずっとあの日の感覚を求めている。好きな人の隣で、薄着で震えながら曖昧に笑って、何も知らないフリをして、自分が誰なのかということすら忘れたまま、大袈裟すぎない相槌を打つことだけに集中していた日のことを。もっとこの人の隣で、この人の話を聞きたいとそれだけを願っていたこと、今日という日のためなら、他の全てを捨ててしまっても構わないと思いながら、あの人の足元についていた湿った雪の欠片を眺めていたあの瞬間。一生忘れられない思い出で、一生解けない呪いが私を微かに奮い立たせる希望になっている。