断片的

こういうことになる

20190401

四.重ねた祈りが新しい春へ私を連れて行く。波打ち際の泡と同じ色の春、昨年までの私と明日の私の間に境界線はない。いまの私に思い出せることはほとんどない。あらゆる思い出を置き去りにして、飛び降りるようにここまでやってきた。自由落下運動の引力で逃げてきた、進んできた。声と足の震えに体を奪われて成仏できない。ピリオドとカンマで区切られた言葉の配列が今の私だ。窓から差し込む陽が当たる本のページが柔く白く輝いてる。この部屋の出口を知らない。外から子供のはしゃぐ声が聞こえてきて、窓の外を覗いてみるのにきまって子どもたちの姿は見えない。気がつくと一人でこの部屋にいることが増えたが、どうやって来ているのかどうやってみんなのもとに帰っているのかも覚えていない。
二.反吐が出る。自分勝手な一挙手一投足だと疑っているんだろう、お前は。何もおれはただ闇雲に世界を呪っているわけじゃない。何も知らずに笑っている人間が許せないだけだ。必要以上の苦しみを貪って辟易するおれのことを。嘲笑う奴らを殺してやりたくてしょうがない。おれの存在意義で誰かをめちゃくちゃにしたとき、心の底から自分を好きになれる気がする。そんな誰かの欲望に似た真似なんてくだらないことはわかってる。けれどおれは違う。誰かを陥れることができたその時、おれが見つめているのはその誰かではなく、自分自身だろう。よく頑張ったな、ありがとう。おれの夢を叶えてくれて、欲望を認めてくれて。これで、おれ、自分のことも世界のことも心から愛せそうだよ。勿論そういう分岐のルートは存在しない。このおれ自身が許さない。なんてったって今のおれは、自分含めたありとあらゆる人間の夢や幸福の象徴に唾を吐かずにはいられない人間なんだぜ。
三.そこのお兄さん、ぼくにいい考えがあるよ。考えというか、アドバイス。展望?いや、提案。或いは世迷い言、気休め、冗談、哀れな厭世主義に対する慰め。ようなぼくらみたいな厄介者が人生を謳歌するには、諦観という忘憂で酩酊することが大事ってこと。そこに夜話のメルヘンをかき混ぜれば、悪者も一発でノックアウト。ぼくはね、このことに関しては君よりよっぽどうまいつもりでいるんだ。大体わかってきただろう。来世に期待する空想に耽ったことはある?きみの場合はそうでなくてもいいのだろうけど、そんな顔しないでよ。よく知っているはずだよ、ぼくのことを嫌ってもぼくの美学を嫌うことができる人間がここに一人もいないこと。
一.わたしはやっぱり何もかもが現実になればいいと思うんだけど。ねえ、味覚障害の人から美味しい食事の権利そのものを奪うなんていまの世の中じゃ批判ものでしょ。わたしはわたしが持たされた権利でのびのび笑えたとき、最高に生きてるって心地がするよ。恥知らずって言ってすぐ怒るけど、面倒だなあ。正しい生き方がどっちなのか考えなくても分かってるのに…、なんてね。行き過ぎた厭世主義はともかく、半身のことは大事にしたいのはわたしも同じ。前々から言ってるじゃない。わたしのせいで彼女がだめになったって、またそうやって悪いことだけ言う。わたしは思い出をあげた。あんたの言う失敗へ彼女を連れて行ったのはわたしじゃない、そうでしょ?話が逸れちゃった。いや、意外と今ので言いたいことはなんとなく言ったかも?余計に苦しみたいんならそのままそうして行くとこまで行っちゃえばいいし、私たちと██のためになることがしたいんなら、もうちょっと大人しくできる道を考えたほうがいいよ。